2024年9月、自民党の総裁選で、石破茂さんが当選した。
自分は特に誰を応援していたわけでもないのだが、石破さんは地方創生を政策に掲げており[1]、また「石破は地方に強い」と言われることがあると知った[2]。
そこで、地方の人たちが石破さんをどれぐらい評価しているのかを、今回の選挙の都道府県別の党員票を参考に可視化してみたい。
「地方」をどう定義するかは難しいが、今回はざっくりと「地方」を「人口密度が小さいこと」とする。そのうえで、人口密度が小さい都道府県でどれぐらい石破さんが票を得ているのか、それは他の候補者と比べ顕著なのか、を検証したいと思う。
人口密度と得票率の相関
まず、今回の選挙の党員党友票のデータ[3]と、各都道府県の人口密度のデータ[4]を得た。
人口密度はかなり分布が偏っていた(少数の都道府県がかなり大きい人口密度を持つ)ので、対数を取ることにした。
人口密度と石破、高市、小泉の3氏の得票率を散布図で描くと図1のようになる。
Correlationの下に書いてあるrおよびpの値は、それぞれPearsonの相関係数(> 0だと正の相関、< 0だと負の相関)と、その相関が有意かどうか(母集団で相関がないのに相関があると判定されてしまう確率)を表している。
また、その候補者のデータの相関がp < 0.05の場合に回帰直線とその95%信頼区間を表示した。
この図を見ると、人口密度(の対数)と石破さんの得票率は負の相関、人口密度(の対数)と高市さんの得票率は正の相関を持っていることがわかり、回帰直線がクロスしているので、確かに、人口密度が低い都道府県では石破さんはライバルであった高市さんよりも得票率が高くなっている。
つまり、「石破は地方に強い」は得票率にも反映されていると考えられる。
小泉さんの得票率は、上位2人に比べると、人口密度に対して特徴的なパターンを見せることはなく、やや低いものとなっていた。
都道府県による傾向
次に、同じデータではあるが、今度は石破さん・高市さんの得票率を軸にとり、都道府県名を直接、散布図に描いてみた(図2)。
点線が、石破さん得票率=高市さん得票率となる線であり、右下に行くほど石破さん優勢の都道府県、左上に行くほど高市さん優勢の都道府県となっている。
先ほども見たように、石破さん優勢の都道府県は人口密度が低め(水色に近い)であり、高市さん優勢の都道府県は人口密度が高め(赤色に近い)である。
また、お二方の出身県である、鳥取と奈良でそれぞれ極端な値を取っている。
興味深いのは、鳥取と奈良にそれぞれ隣接している島根と和歌山の票の傾向も、お二方の出身県の傾向に類似しているという点だ。
地元で演説などを行った際に隣の県にも立ち寄っていてその効果が出ているのか、あるいは地元での支持者が隣の県の友人などとよくコミュニケーションを取ることで傾向が似通ってくるのか。
考えられる原因は様々だが、「地理的距離」といった、一見、政治的志向とは無関係そうな要因が、わずかながら都道府県別の得票率に関係がありそうなことは、自分のなかで新しい発見だった。
最後に強調しておくが、自分はこれをもとに何かを主張したいわけではない。イメージで語られることの多い「〜に強い」などのフレーズが、実際のデータでどうなのか、確かめたくなっただけである。
さらに、最終的に議員票のウエイトが大きくなる決選投票で総裁が決定しているため、「地方に強い」という要素の一点のみで石破さんが当選したわけでもないだろう。
しかしながら、このようにデータで考えることで、自民党総裁選に出る方(ほとんどいないと思うけど!笑)にとってはどこで票を取るかという戦略に反映できるかもしれない。
参考・データ引用元:
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